2014 年 75 巻 8 号 p. 2199-2202
症例は70歳,女性.心窩部不快感の精査で上部消化管内視鏡検査を行ったが異常なく,腹部造影CT検査にて膵頭十二指腸領域のリンパ節腫大を認めた.EUS-FNAにより神経内分泌腫瘍が疑われた.FDG-PET/CT検査にて十二指腸壁にも集積を認めたため,リンパ節転移を伴う十二指腸神経内分泌腫瘍の術前診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.切除病理標本では幽門輪の十二指腸側に隣接してIIa+IIc病変を認めた.病理組織学的所見では粘膜から筋層にかけて膨張性に浸潤する20mm大の腫瘍を認め,十二指腸神経内分泌腫瘍と術後診断した.幽門輪に腫瘍が隣接して存在したことにより,上部消化管内視鏡検査で死角となった.腫瘍に十分な大きさがあるにもかかわらず,内腔へほとんど隆起しない発育形態を示す,稀な十二指腸神経内分泌腫瘍の1例を経験した.