2014 年 75 巻 8 号 p. 2203-2209
症例は65歳の男性,健診のCTで膵頭部領域に9cmの腫瘤を指摘された.造影CTで腫瘤は動脈早期に濃染され胃十二指腸動脈からの栄養血管を認めた.上部内視鏡では前庭部に壁外圧迫所見を認め,上十二指腸角のびらんより生検を試みたが出血のため組織診断を得られなかった.十二指腸GISTまたは膵神経内分泌腫瘍の診断で手術を施行した.十二指腸第二部から有茎性に発育する腫瘍を認め,膵頭後部に膵実質と癒着したリンパ節を認めたため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍細胞はc-kit陽性で十二指腸GISTと診断された.十二指腸GISTは膵実質埋没や有茎性壁外性発育など多彩な画像所見を呈する腫瘍であり,CTでは十二指腸や膵原発多血充実性腫瘍との鑑別が問題となる.また十二指腸乳頭,膵臓との位置関係から部分切除が困難なことがあり正確な術前診断と発育形式に応じた術式選択が必要である.