日本臨床外科学会雑誌
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症例
静脈血栓が原因と考えられた漏出性胆汁性腹膜炎の1例
中野 明神宮 和彦植松 武史北林 宏之
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2015 年 76 巻 1 号 p. 101-105

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抄録

症例は92歳,女性.上腹部痛にて当科を受診.腹部超音波にて胆嚢に結石を認めず,腹部CTで胆嚢は虚脱し胆嚢頸部に血腫と思われる高濃度領域と胆嚢周囲から右側腹部,右横隔膜下に腹水を認めた.胆嚢の循環障害に起因する急性胆嚢炎・胆嚢穿孔を疑い,同日緊急手術を施行した.開腹すると右上腹部を中心に胆汁の漏出を認めた.胆嚢は頸部に血腫と底部から体部に一部壊死を認めたが穿孔は認めず,胆嚢以外に胆汁漏出の原因となる病変は認めず胆嚢摘出術を施行した.摘出標本肉眼所見でも穿孔は認めず胆嚢頸部に血腫と血栓と思われる結節を認めた.病理組織検査では胆嚢壁に出血壊死と静脈内に血栓が認められたため,静脈血栓による壊死性胆嚢炎と診断された.胆嚢の静脈血栓が原因と考えられた漏出性胆汁性腹膜炎症例は,自験例を含めこれまで本邦で4例報告されており,極めて稀な症例であったため,若干の文献的考察を加え報告した.

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