日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
肝下面から右臀部まで腹腔内外に腫瘍様浸潤をきたした放線菌症の1例
宮永 克也多保 孝典林 秀樹千葉 幸夫稲井 邦博内木 宏延
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 10 号 p. 2582-2586

詳細
抄録

症例は83歳の女性で,右臀部皮下腫瘤を自覚し当院受診.腹部・骨盤CTとMRIにて,肝下縁から連続して殿筋内,殿筋背側の皮下に連続する軟部腫瘤影を指摘.術前に確定診断には至らず,診断目的に右臀部皮下腫瘤核出術を施行し,短期間の抗菌薬投与のみで経過観察となった.術後3カ月の腹部・骨盤CTでは,腹腔内外の軟部腫瘤様病変は完全に消失していた.その後,切除標本の最終病理結果にて放線菌症と診断されたが,既に病変は消失していたので経過観察とした.術後6年経過した現在まで再発を認めていない.腹部放線菌症は比較的稀で悪性腫瘍との鑑別が困難となるため,非定型的な腹部腫瘤の場合,本症例も念頭に置き,積極的な生検を行って確定診断を得ることで,過大手術を防止しうることが示唆された.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top