日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
乳癌両側副腎転移により発症したAddison病の1例
嶋田 昌彦石井 賢二郎関 博章安井 信隆坂田 道生松本 秀年
著者情報
キーワード: 乳癌, 副腎転移, Addison病
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 11 号 p. 2650-2653

詳細
抄録

症例は57歳,女性.2008年2月,左乳癌(T1N1M0)のため乳房温存手術を施行し,術後補助療法としてtamoxifenを内服した.2年後,前胸部ならびに背部に皮下腫瘤を認め,生検により転移性腫瘍と診断した.その後,肝後区域に転移巣が出現し,さらに両側副腎転移を認めた.2014年7月,頻回の嘔吐と下痢を訴え緊急入院したが,保存的治療にて諸症状が軽快し4日目には軽快退院した.2014年9月,食欲不振,全身倦怠感が増悪し,著明な体重減少(2カ月で12.6kg)を認め,再び緊急入院となった.顔面・手背・口腔粘膜の著明な色素沈着からAddison病を疑い,hydrocortisone投与により諸症状は劇的に改善した.ACTHを負荷してもコルチゾールの上昇は認められなかった.副腎転移を伴う乳癌患者はしばしばみられるが,両側副腎転移を認める場合はAddison病を念頭に置いた鑑別が必要である.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top