2015 年 76 巻 11 号 p. 2774-2781
症例は77歳,男性.2010年8月から心窩部痛を認め,近医を受診し,急性胆嚢炎を疑われ,同月に当科紹介受診された.採血にて,肝機能や胆道系酵素の上昇は認めないものの炎症所見を認めた.MRCP検査と腹部造影CT検査で,肝内胆管の軽度拡張と総肝管の狭窄を認めたが,明らかな腫瘤影は認めなかった.ERCP施行したが,胆嚢は描出されず,総肝管の狭窄部は壁外性の圧排が示唆された.MD-CTとDIC-CTによる3D統合画像で確認したところ,胆嚢動脈が総肝管を背側へ圧排していた.胆嚢炎が完全に悪性も否定出来なかったため,同年9月,開腹胆嚢摘出術を施行した.術中所見は3D統合画像と同様であった.病理組織診断は,慢性胆嚢炎であった.本症例のように,胆嚢動脈による肝外胆管狭窄は極めて稀で,術前の3D-CTで診断しえたという報告例は認めなかったので若干の文献的考察を加えて報告する.