2015 年 76 巻 11 号 p. 2788-2793
症例は55歳,女性.受診前日に腹部を蹴られ,腹痛が出現した.翌日になっても改善しないため当院救急外来を受診した.腹部CT検査で胆嚢内に造影剤の漏出を認め,外傷性の胆嚢出血と診断した.胆嚢穿孔や他臓器損傷を認めなかったため,保存的治療を選択した.しかし,遅発性の胆嚢炎を発症し,入院後第6病日に開腹胆嚢摘出術を施行した.術後経過は良好で術後第6病日に退院した.腹部鈍的外傷による穿孔のない胆嚢出血は稀な病態であり報告例は稀である.報告例では,治療は多くの症例で手術が行われていたが,最近では保存的治療の報告も散見される.しかし,本症例のように血腫による遅発性胆嚢炎や胆道閉塞をきたす可能性があり,常に手術治療に移行できる準備をして経過観察することが必要である.胆嚢穿孔を伴わない鈍的外傷性胆嚢出血の1例を経験したので報告する.