2015 年 76 巻 11 号 p. 2811-2816
症例は52歳,女性.胃潰瘍で近医通院中に心窩部痛・背部痛・食欲低下があり,腹部USで膵腫瘍を指摘され紹介となった.CTでは膵全体に14cm大の濃度不均一な多血性,分葉状の腫瘍を認めた.腫瘍は脾門部と左側大網の静脈内に腫瘍栓を形成し,上腸間膜静脈への浸潤も疑われた.また左腎静脈を圧排,左副腎への浸潤が疑われた.膵神経内分泌細胞腫瘍を疑い,リンパ節郭清を伴う膵全摘,門脈合併切除再建術を施行した.術中所見で左副腎および左腎静脈への浸潤が疑われ,左副腎と左腎を合併切除した.切除標本の病理組織所見では,異型細胞が索状・胞巣状,一部で腺房状構造を呈して密に増殖していた.免疫染色および電顕所見も膵腺房細胞由来を示し,膵腺房細胞癌と診断した.術後は血糖コントロールも含めて概ね良好に経過し,術後46日目に退院となった.術後14カ月経過し無再発生存中であるが,今後も再発に対する厳重な経過観察が必要である.