日本臨床外科学会雑誌
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症例
一時的ステント留置術が奏効した食道癌治療中の嘔吐による食道破裂の1例
奥村 浩内門 泰斗尾本 至大迫 祐作石神 純也夏越 祥次
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2015 年 76 巻 12 号 p. 2946-2950

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抄録

症例は58歳,男性.嚥下困難を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で食道および下咽頭腫瘍を指摘され,当科紹介となった.診断は,胸部食道進行癌および下咽頭表在癌の同時性重複癌であった.治療は化学放射線療法(CRT)後に手術の方針とした.CRT開始後8日目に数回の嘔吐後,左胸部痛が出現した.胸部CT検査で下縦隔に限局するfree airを認め,内視鏡で食道胃接合部より3cm口側左壁に長径2cmの穿孔を確認し,食道癌治療中の嘔吐による食道破裂と診断した.一時的な食道カバードステント留置による保存的治療が行われた.経過は順調で,破裂後16日目にCRT再開,治療方針を根治CRTへ変更し,照射は完遂された.ステントは,破裂後47日目に抜去した.抜去後の内視鏡所見では,穿孔は治癒,食道腫瘍は消失しComplete Responseと判定され,1年無再燃生存中である.

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