2015 年 76 巻 12 号 p. 2951-2956
症例は49歳,女性.10年前より近医で貧血・低蛋白血症,胃内に多発するポリープを指摘されていた.2014年3月に嘔吐にて当院救急外来を受診.貧血・低蛋白血症を認め,緊急入院となった.上部消化内視鏡検査では,胃全体にポリープが多発し,前庭部では幽門を覆い通過障害をきたしていた.腹部造影CT検査で,胃体上部から幽門にかけて,造影効果を伴う腫瘤が胃の内腔を占拠し,胃内口側に液貯留を認めた.絶食と輸血による内科的治療にて全身状態が改善した後に,腹腔鏡下胃全摘術を実施した.切除標本においては,胃全体にびまん性浮腫状のポリポーシスを認めた.組織学的に胃限局性若年性ポリポーシスを診断された.術後合併症なく経過し,貧血・低蛋白血症はともに改善した.胃限局性若年性ポリポーシスは稀な疾患であるが,今回腹腔鏡下胃全摘術を行い,良好な経過をたどった症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.