2015 年 76 巻 12 号 p. 2971-2976
症例は73歳の男性で,ふらつきの増悪を主訴として当院を受診した.血液生化学検査で貧血を認め,CEAとCA19-9が軽度上昇していた.上部消化管内視鏡検査では胃小弯に隣接した口側の3型腫瘍と肛側の2型腫瘍を認めた.両病変から生検を行い,ともに中分化型腺癌と診断された.腹部CTでは2箇所に分かれた胃壁肥厚と小弯側リンパ節の腫大を認めた.以上より胃の進行衝突癌と術前診断し,胃全摘術を施行した.病理組織学的に二つの腫瘍はわずかな正常粘膜を介在して粘膜下層以深で隣接していた.口側病変は著明にリンパ球が浸潤したEpstein-Barr virus関連胃癌と診断され,肛側病変は中分化型腺癌であった.Epstein-Barr virus encoded RNA in situ hybridizationによって「真の衝突癌」であることを証明することができた.