日本臨床外科学会雑誌
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平成25年度学会賞受賞記念講演
肝臓外科(肝局所療法から肝切除まで)の医療現場一筋
佐々木 洋
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2015 年 76 巻 3 号 p. 447-465

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抄録

1976年に大阪大学医学部を卒業後,1978年4月に大阪府立成人病センター外科にレジデントとして入職後,2006年12月に消化器外科部長として退職するまでの28年8カ月在籍した.その間,肝癌の手術(1,500例以上)を中心とした臨床と研究を同時進行できた.1980年代前半は肝切除例が少なく,手術不能例に対する治療法として肝動注療法を行っていたが,その際の血流分布や昇圧動注化学療法時の血流動態を,RIを用いて,動的かつ定量的に評価した.1980年代の肝細胞癌(HCC)に対する肝切除は術前TACEを標準とし,切除標本においてTACEの壊死効果を組織学的に検討し,多くの知見を得た.CDDPを併用した新しいTACE(サンドイッチ療法)や,側副血行路の発達のため,TACEが無効となったHCCに対する側副血行路の半永久的遮断法(ラップ療法)を開発した.1990年代は術前TACEを廃止し,積極的に新鮮標本を採取,保存し,切除標本を用いて,肝の微小がんと境界病変のclonality,多中心性発癌と転移再発の鑑別などの分子生物学的検討,calponinなどを用いて予後因子の臨床病理学的検討を行った.臨床的には,肝炎ウィルスとHCCの再発,予後との関係を明らかにした.2000年代は進行肝癌,特に高度脈管侵襲例に対して積極的手術を行った.門脈本幹に進展したHCCに対する,術前に放射線,肝動注を併用した肝切除,下大静脈~右心房への進展例に対する,人工心肺下での肝切除,グラフトを用いた血管再建などを行い,ビデオシンポジウムで報告してきた.2007年に八尾市立病院に転任後,肝臓外科医に加えて,病院管理,医師会,病院協会活動など,今なお多忙な生活を謳歌している.

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