2015 年 76 巻 4 号 p. 809-812
症例は65歳,男性.2013年4月より,時折,右下腹部に痛みや違和感を自覚していた.2013年10月に右下腹部痛の増悪と褐色尿を主訴に当院受診.腹部CT検査にて,盲腸と連続して102×60mm大の内部に気泡を伴う被包化された液体貯留を認めた.膿瘍形成をきたした穿孔性虫垂炎と診断し,同日緊急手術を施行.術中所見にて明らかな膿瘍は認めず,骨盤内に盲腸から連続する手拳大の腫瘤を認めた.虫垂粘液嚢腫と診断し,術式を回盲部切除とした.術後病理組織診断にてLow-grade appendiceal mucinous neoplasmと診断された.虫垂粘液嚢腫の成因は虫垂根部の無菌性閉塞であるため,本来,腫瘤内に気腫は認めないはずである.自験例では腫瘤内に気腫を有し,膿瘍形成をきたした穿孔性虫垂炎と術前診断されたが,術中所見にて虫垂粘液嚢腫と診断し,術式を回盲部切除とすることにより根治切除としえた.