2015 年 76 巻 4 号 p. 868-872
症例は38歳,男性.後腹膜原発脱分化型脂肪肉腫に対して,後腹膜腫瘍摘出術を施行したが,肝十二指腸間膜内の遺残腫瘍による総胆管狭窄を認めた.初回手術から2カ月後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見では,脱分化型脂肪肉腫が肝十二指腸間膜全体に浸潤しており,病理組織学的に切除断端陽性であった.自験例は,後腹膜原発脱分化型脂肪肉腫が肝十二指腸間膜へ被膜外浸潤し,肝十二指腸間膜内で結節性病変を形成したことで,胆管が圧排され胆管狭窄をきたしたと考えられたが,後腹膜原発脂肪肉腫で胆管狭窄をきたした報告例は過去に認めない.また,肉眼的には完全摘出したが組織学的切除断端陽性であったことから,脂肪肉腫の浸潤範囲を術前画像や術中所見で評価することは困難であると考えられ,まずはR2手術とならないような手術を心掛け,再発の早期発見に努めることが重要であると考える.