日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝細胞癌血行性胃転移の1例
中出 裕士松本 壮平若月 幸平田仲 徹行右田 和寛中島 祥介
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キーワード: 肝細胞癌, 胃転移
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2015 年 76 巻 5 号 p. 1137-1141

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抄録

症例は64歳,男性.アルコール性肝炎経過中の2004年に初めて肝細胞癌を指摘され,肝動脈化学塞栓術,放射線療法を行い経過観察していた.2009年6月,上部消化管内視鏡検査で胃体上部に易出血性の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を指摘,生検で低分化型腺癌を検出した.その後,腫瘍は急速に増大し貧血の進行を認めたため,2009年9月に胃全摘術を行った.術後病理診断では腫瘍は漿膜下層から粘膜下層にかけて増生し肝細胞様の形質を示し,索状構造を認め,管状腺癌の構造は確認されなかったこと,免疫染色でHAS(+)・CEA(-)・CK19(-)であったことから組織学的に肝細胞癌と推定し,病理所見と臨床経過より肝細胞癌の胃転移と診断した.肝細胞癌の胃への転移は珍しく,自験例を含め本邦では38例の報告を認めるのみである.今回われわれは,肝細胞癌の血行性胃転移の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2015 日本臨床外科学会
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