2015 年 76 巻 5 号 p. 1192-1195
症例は76歳,男性.複数回の右鼠径ヘルニアの既往があった.膀胱を内容とする内鼠径ヘルニア再発に対し7年前にmesh plug法が施行された.1年前より創部から排膿を認め精査にてメッシュ感染,膀胱皮膚瘻と診断された.保存的加療で軽快せず手術の方針とした.瘻孔を含む皮膚とメッシュを除去し,膀胱は瘻孔部を切除した.プラグ先端が膀胱へと穿通していた.膀胱を縫合閉鎖し,ヘルニアはiliopubic tract法で修復した.術後経過は良好であった.鼠径ヘルニア術後のメッシュ感染は保存的加療で軽快せずメッシュ除去を要することが多い.膀胱を内容とする鼠径ヘルニアは膀胱ヘルニアと呼ばれることがある.手術所見からはプラグ先端が膀胱壁へと向いて留置されたことが膀胱瘻を形成した原因と示唆された.膀胱ヘルニアに対するmesh plug法は膀胱皮膚瘻の形成に注意する必要があると考えられた.