日本臨床外科学会雑誌
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症例
奇静脈食道陥凹部の肺嚢胞破裂が原因と思われる自然血気胸の1例
川島 光明佐野 厚
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2015 年 76 巻 5 号 p. 981-984

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抄録

67歳,男性.大動脈弁置換術後(機械弁)のためワーファリン内服中,かつ慢性C型肝炎のため血小板低値であった.安静時に突然の右胸部痛を自覚し,その4時間後に一過性の意識レベル低下を起こしたため当院に救急搬送された.一過性意識レベル低下の原因になるような他疾患は除外され,肺の気腫性病変に伴う右自然血気胸と出血性ショックの診断で緊急手術となった.出血源は胸膜頂に存在した索状物の切断端であり,自然気胸の原因は奇静脈食道陥凹部の肺嚢胞と思われた.出血点は電気凝固して止血し,肺嚢胞は自動縫合器で切除し,ポリグリコール酸シートで被覆した.術後,胸腔内への再出血は無く,退院に至った.近年,肺気腫等に伴う自然気胸の原因として,奇静脈食道陥凹部における肺嚢胞形成の重要性が報告されており,見落としが無いように注意が必要と考えられた.

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© 2015 日本臨床外科学会
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