2015 年 76 巻 5 号 p. 994-997
症例は72歳の男性.Stage IIIの胸部食道癌の診断で,術前化学療法を2コース施行後に食道亜全摘,3領域郭清,胃管後縦隔経路再建術を施行した.術翌日より誤嚥からの重症肺炎を併発し,人工呼吸管理を要した.抗菌薬投与を行うが改善せず,acute respiratory distress syndrome(以下,ARDS)に進展した.術後18日目より腹臥位呼吸管理とステロイド投与を開始すると,徐々に酸素化能の改善が得られ,人工呼吸器から離脱可能となり救命できた.重症ARDSに対する腹臥位呼吸管理の有用性が近年報告されている.一方で,ステロイド治療への評価は定まっていない.本症例は,腹臥位呼吸管理とステロイドによる治療の併用がARDSに対して奏効したと考えられ,文献的考察を加えて報告する.