2015 年 76 巻 6 号 p. 1283-1288
症例は60代,男性.14年前に左腎細胞癌に対し左腎摘出術を施行.6年前と4年前に肺転移に対して肺部分切除術を受けた後,経過観察中であった.前頸部腫瘤を自覚し,超音波検査で複数の頸部リンパ節腫脹と左甲状腺腫を認めた.両者から細胞診を施行し,腎細胞癌甲状腺転移と診断した.また,術前CT検査で右鎖骨下動脈起始異常を認めた.手術適応と考え,甲状腺全摘術・リンパ節摘出術を施行.術中,右迷走神経から直接分岐し,横走する非反回下喉頭神経(non-recurrent inferior laryngeal nerve;NRILN)を同定し温存した.病理診断は腎細胞癌甲状腺転移であった.術前に右鎖骨下動脈起始異常を認めた場合,NRILNを予想する必要がある.また腎細胞癌の既往がある場合,甲状腺をはじめ遠隔臓器に遅発性転移をきたす可能性があるため,症状を生じた場合には画像検査などの精査が必要である.