日本臨床外科学会雑誌
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症例
cN3肺癌が術前に否定できた甲状腺・肺重複癌の1例
池田 秀明山下 裕大石 正博山村 方夫加藤 大水野 憲治
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2015 年 76 巻 6 号 p. 1332-1337

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抄録

症例は78歳,男性.検診胸部X線写真で右下肺野の腫瘤影を指摘され,当院紹介となった.CT,PET/CTにて右肺中葉に3.2cmの腫瘤が存在し,甲状腺右葉下部・右鎖骨上窩リンパ節・気管分岐下リンパ節にFDG集積を認めた.肺腫瘤はCTガイド下生検にて扁平上皮癌と診断した.頸部エコーでは,甲状腺右葉下部に最大7mmの低エコー部が散在していたが甲状腺腫瘍として認識できなかった.右鎖骨上窩リンパ節は針生検にて甲状腺乳頭癌リンパ節転移と診断された.よって,甲状腺癌と重複したcN2肺癌と診断し,右肺中葉切除術ND2a-1と甲状腺右葉切除術D2aを施行した.甲状腺癌の存在がなければcN3肺癌で手術適応外となることが多いと思われる.肺癌に伴い頸部に結節を認める症例に対しては,安易にcN3肺癌とせず甲状腺癌リンパ節転移や副甲状腺腫瘍,神経原性腫瘍,悪性リンパ腫等との鑑別を行い手術適応を追求することが重要である.

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