2015 年 76 巻 6 号 p. 1352-1355
症例は40歳,女性.胃癌の診断で腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行し,術後補助化学療法を施行していたところ,術後約4カ月の採血検査でCA19-9の急激な上昇が見られた.画像検査では胃癌再発や他の悪性疾患,胆膵などの異常などのCA19-9高値と関連する所見は認められなかったため経過観察を続けていたが,術後約8カ月に全身倦怠感と口渇が強くなり,諸検査で1型糖尿病に起因する著明な高血糖の存在が明らかとなった.その後,血糖コントロールの改善とともにCA19-9は正常化し,術後1年2カ月経過した現在まで腫瘍マーカーの再上昇を認めていない.CA19-9の上昇の一因として高血糖が知られており,血糖値の変動をきたしやすい胃切除後のCA19-9上昇は高血糖に関連する偽陽性も念頭に置き適切な検索と治療が必要であるものと考えられた.