2015 年 76 巻 6 号 p. 1397-1401
症例は56歳,男性.2011年12月,下痢便時に鮮血を認め,精査目的に当院内科紹介受診.大腸内視鏡検査にて,上行結腸内に多数の憩室を認めた.その1憩室より湧出性出血を認め,クリップにて止血した.さらに,口側より鮮血を認め,盲腸部まで確認したところ,虫垂開口部より拍動性出血を認めた.クリップでの止血は困難で,貧血の進行も認めたため,同日,緊急手術(開腹による虫垂を含む盲腸部分切除術)を施行した.摘出標本肉眼所見では,虫垂内に憩室を3箇所認め,その1つの憩室の粘膜のみ発赤変化を認めた.病理所見では,同部位に明らかな破綻血管を同定することはできなかったが,菲薄化した筋層に覆われた虫垂真性憩室出血と診断した.虫垂憩室症は稀な疾患であり,術前診断は困難である.その憩室出血となると,さらに稀な疾患である.今回,われわれは虫垂真性憩室出血と上行結腸憩室出血が同時に併発したという稀な症例を経験したので報告する.