2015 年 76 巻 6 号 p. 1499-1504
真性多血症(polycythemia vera,以下PV)を合併した患者の周術期には,血栓症と出血のリスクが増すことが報告されており慎重な管理が必要とされる.今回,われわれはPVに併発した膵頭部癌の1切除例を経験したので報告する.症例は,74歳の男性.20年前より,真性多血症の診断で近医にてハイドロキシウレア・アスピリンの内服治療中であり,14年前に脳梗塞の既往がある.定期受診時に,食後の上腹部痛の訴えと血液検査で血清アミラーゼ値が高値であったため,精査・腹部造影CTで膵頭部癌を認め,手術目的に当院へ転院となった.術前は瀉血を行い,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.血栓塞栓症予防のため手術室入室より弾性ストッキング,間欠的空気圧迫装置を使用し,術後5日間ガベキサートメシル酸塩を投与した.血栓症や出血の合併症なく術後28日目に軽快退院となった.