日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
遊走脾捻転に伴う脾静脈閉塞により胃静脈瘤をきたした1例
酒井 剛北見 智恵河内 保之川原 聖佳子牧野 成人西村 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 76 巻 6 号 p. 1505-1508

詳細
抄録

遊走脾は比較的稀な疾患である.遊走脾の合併症として捻転による脾梗塞があるが脾静脈のみが閉塞することは稀である.われわれは,遊走脾捻転に伴う脾静脈閉塞により胃静脈瘤をきたした1例を経験したので報告する.症例は20歳,女性.生後5カ月より血小板減少を認め経過観察されており,精査で遊走脾と診断された.転居に伴い当院を受診した.腹部骨盤CTで骨盤内に腫大した脾臓を認め,脾静脈閉塞,伸展した胃脾間膜内に脾動脈とそれに螺旋状に併走する短胃静脈を認めた.脾静脈還流は,拡張した短胃静脈から胃静脈瘤を介し左胃静脈から門脈へ還流していた.上部消化管内視鏡検査では胃穹窿部に胃静脈瘤を認めた.腹腔鏡下脾臓摘出術を施行し,術後3カ月のCTで胃静脈瘤の消失を確認した.遊走脾捻転に胃静脈瘤を合併した報告は非常に稀である.本例は慢性的に脾臓が捻転し脾静脈が閉塞したため徐々に脾臓がうっ血し,脾腫および胃静脈瘤を生じたと考えられた.

著者関連情報
© 2015 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top