2015 年 76 巻 7 号 p. 1562-1566
膵頭十二指腸切除術における死亡率,合併症率は主に膵吻合の縫合不全に左右される.多くの膵吻合手技が報告されているが,gold standardと言えるものがないのが現状である.われわれの施設では,膵頭十二指腸切除術における膵再建を膵胃吻合(嵌入法)で行ってきたが,胃を用いることができない数例に対して膵胃吻合の基本的手技を応用した膵空腸端側吻合を行った.また,膵胃吻合の縫合不全例に対しても膵空腸端側吻合で再手術を行い良好な経過を得た.以降,当院では膵頭十二指腸切除術後の膵再建を嵌入法による膵空腸端側吻合で行っている.最近2年間で12例の症例を経験しているが膵液瘻はほとんど認めていない.この膵空腸吻合はわずか8針の縫合で,難しい手技を必要としないシンプルで縫合不全の少ない方法であり有用と思われる.