2015 年 76 巻 7 号 p. 1649-1655
症例は31歳の男性,ブラジル人.嚥下障害を主訴に前医受診,食道腫瘍と診断され当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて,食道内腔をほぼ占める腫瘍を認め,その表面は正常粘膜に被われていた.CT検査では,頸部食道から胸部下部食道に至る腫瘍を認め,内部は脂肪濃度と軟部濃度が混在していた.頸部血管3D-CT検査にて,腫瘍の栄養血管は上甲状腺動脈の分枝であると同定された.巨大fibrovascular polypの診断で手術を施行した.左頸部アプローチにて頸部食道を切開し,ポリープの基部を切離して腫瘍を摘出した.摘出標本は27cm大の弾性軟な巨大腫瘍で,病理組織学的に良性fibrovascular polypと診断された.術後半年が経過した現在,再発所見は認めていない.自験例は本邦報告例の中で最大であり,このような巨大腫瘍でも,適切な術前診断により頸部アプローチにて腫瘍切除術が可能であった.