2015 年 76 巻 7 号 p. 1679-1684
症例1は63歳の男性.上部消化管内視鏡検査で胃幽門部に発赤を伴う不整な隆起を認め,進行胃癌と診断し幽門側胃切除を行った.切除標本の病理組織学的検索では幽門部の病変は深達度mの高分化型腺癌で,病変の粘膜下層に嚢胞状に拡張した胃粘膜下異所腺を認め,内視鏡検査における隆起成分は癌の浸潤ではなく,びまん性胃粘膜下異所腺によるものであった.症例2は74歳の男性.内視鏡検査で胃体上部・胃角部・胃体下部に不整な小陥凹を認め,いずれも早期癌(0-IIc)と診断された.3病変ともESDが行われたが,体下部病変はsm2,ly(+)であったため胃全摘を行った.切除標本に腺癌の残存を認めなかったが,小彎側の粘膜下層に大小の嚢胞を多数認め,びまん性胃粘膜下異所腺と診断された.びまん性胃粘膜下異所腺に併存した胃癌は胃壁に厚みを持ち,進行癌と誤診されることがあり,また多発することが多いことに注意すべきである.