日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝切除を施行した原発性胆汁性肝硬変に発生した肝細胞癌の1例
藤 智和松川 啓義塩崎 滋弘藤原 康宏佐藤 太祐二宮 基樹
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2015 年 76 巻 7 号 p. 1766-1771

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抄録

症例は74歳,男性.68歳より原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis,以下PBC)の診断で経過観察中であった.定期フォローの腹部造影CTでsegment 7に右肝静脈に接する34mm大の腫瘤を認めた.精査にて肝細胞癌と診断,右肝静脈を含む拡大後区域切除術を施行した.術中PBCの硬変肝に対する肝切離は他の肝硬変症への肝切離と大きく異なる印象は無く,また術後も特異な合併症なく軽快した.切除標本の病理組織検査所見では中分化型を主体とする肝細胞癌を認め,非腫瘍部ではScheuer分類IV期のPBC像を呈していた.PBCに対する肝切除の報告では,PBCに特有の周術期合併症は認められず,PBCに発生した肝細胞癌に対する肝切除術を施行する際には,他の原因の肝硬変の際と同様に,癌の進行度診断と肝予備能評価に基づいて切除術式を決定することが重要と考えられた.

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