日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前診断が困難であった遺残虫垂炎の1例
長尾 祐一佐藤 永洋中山 善文
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キーワード: 遺残虫垂炎, 義歯誤飲
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2015 年 76 巻 8 号 p. 1942-1946

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抄録

症例は50歳,男性.約30年前に虫垂切除術を施行された.2012年2月より右下腹部痛を認め,近医受診.精査目的にて,当院消化器内科紹介受診された.CTにて盲腸から上行結腸に壁肥厚ならびに盲腸部に腫瘤を形成しており,内部にアーチファクトを伴う高吸収域を認めた.患者への問診にて2週間前に義歯誤飲しており,排泄を確認していないとのことで,義歯誤飲による腸炎疑いにて当科紹介受診された.下部消化管内視鏡検査では盲腸は著明に壁肥厚を認め,義歯の確認はできなかったが,内部に埋もれている可能性を考え,2012年3月上旬に回盲部切除術を施行した.切除標本では,盲腸の著明な壁肥厚を認めるが,明らかな義歯は認めなかった.病理組織検査では,虫垂の遺残とその周囲に線維化を伴った炎症所見を認め,遺残虫垂炎の診断であった.
以前に虫垂切除を受けた既往があれば虫垂炎は除外してしまいがちであるが,遺残虫垂炎の可能性を念頭に置く必要があると考えられた.

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