日本臨床外科学会雑誌
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症例
尋常性乾癬の維持療法中に肝細胞癌を発症したWilson病の1例
中川 有中鉢 誠司
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2015 年 76 巻 8 号 p. 2008-2012

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抄録

症例は53歳,男性.13歳から錐体外路症状を呈し,19歳でWilson病と診断されD-ペニシラミンの投与を受けていた.35歳頃から尋常性乾癬にてシクロスポリンの投与を受けていた.前医にて施行したCT検査にて肝腫瘤を指摘された.当院で施行した腹部造影CT検査とGd-EOB-DTPA造影MRI検査で,肝S2に6cmの早期濃染とwash outを呈する腫瘤を認め,肝細胞癌と診断した.嚥下障害などの神経症状やシクロスポリン内服のリスクはあったが,肝機能はChild-Pugh Aで根治切除可能と判断し外側区域部分切除を行った.病理学的診断では腫瘍は中分化型肝細胞癌であった.背景肝は肝硬変で,ロダニン染色では肝細胞に銅の沈着を認めなかった.Wilson病にHCCの合併は稀とされてきたが,肝硬変を母地とし,尋常性乾癬の合併とシクロスポリンの投与により,癌発症リスクが上昇しHCCを発症したと考えられた.

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