2015 年 76 巻 9 号 p. 2257-2262
症例は83歳,女性.嘔吐・腹痛を主訴に当院を受診し,腸閉塞の診断で入院となった.イレウス管を挿入し保存的加療としたが,排液は減少せず,小腸造影検査で回腸の狭窄を認めたため,入院11日目に単孔式腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると,S状結腸腹膜垂が回腸腸間膜に癒着し,同部位に回腸が嵌入し絞扼されていた.癒着を剥離し絞扼を解除すると腸管の血流は回復したため,腸切除は施行しなかった.術後11日目に軽快退院となった.結腸腹膜垂による腸閉塞の報告は比較的稀であり術前診断は困難であるが,単孔式腹腔鏡によるアプローチは診断と治療において有効な方法の一つであると考えられ,若干の文献的考察を加え報告する.