日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝硬化性血管腫の1例
浅沼 和樹吉田 信澤崎 兵庫高梨 節二河島 秀昭八代 真一
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2016 年 77 巻 1 号 p. 128-134

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抄録

症例は61歳,女性.自己免疫性肝炎の疑いで近医通院中に腹部超音波検査で膵に多房性嚢胞性病変を認め,当院へ紹介された.膵病変は諸検査で分枝膵管型膵管乳頭粘液性腫瘍と診断したが,MRCP検査で肝にT1強調像で低信号,T2強調像で淡い高信号の腫瘤を認めた.造影CT検査で辺縁から内部へ不均一に淡く造影され,Gd-EOB-DTPA MRI検査では肝細胞相で低信号を示した.以上から肝内胆管癌を疑い,診断と治療を兼ねて手術方針とした.腫瘍は肝外側区域表面に白色の漿膜変化を伴う比較的柔らかい腫瘤として触知したが,その辺縁に線維化の強い部分があり浸潤傾向のある悪性腫瘍と考え,左肝切除と胆嚢摘出およびリンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査で,腫瘤は弾性線維に富み異型の乏しい血管増生を認め,肝硬化性血管腫と診断した.硬化性血管腫はまれな疾患であるが,乏血性の肝腫瘤性病変の鑑別診断に本症も念頭に置く必要がある.

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© 2016 日本臨床外科学会
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