2016 年 77 巻 1 号 p. 74-78
症例は63歳,男性.起床時に嘔吐を伴う腹痛があり,救急外来で急性胃腸炎と診断された.外来で経過観察していたが,症状が持続したため4日後に再診した.血液検査で炎症反応高値,腹部CT検査で膿瘍を伴う虫垂腫大を認めたため,急性虫垂炎の診断下に緊急手術を施行した.なお,術後の検討ではCT検査において小腸壁の肥厚と嚢胞性病変を認めた.術中所見では小腸に径7cm大の嚢胞性病変があり,破裂して周囲に膿瘍を形成していた.そこで,嚢胞を含む小腸を約20cm切除し,二次的に炎症所見を呈していた虫垂も切除した.病理組織的に嚢胞は中皮由来を示唆する所見であり,mesothelial cystと診断した.小腸由来のmesothelial cystは非常に稀であり,今回自然破裂にて急性腹症を起こした症例を経験したので報告する.