2016 年 77 巻 10 号 p. 2564-2569
症例は59歳,男性.右下腹部の痛みと腫瘤を主訴に来院.受診2週間前に腹部の鈍的外傷と外傷後の血尿を自覚していた.腹部USとCT画像にて,右側下腹部後腹膜に18cm大の嚢胞性病変を認め,腫瘤による右尿管の圧排と屈曲,さらに右水腎症も合併していた.術前検査と経過から外傷後の仮性嚢胞を疑い,右水腎症も保存的には改善困難と判断し,腹腔鏡下に後腹膜嚢胞を全摘出した.病理組織学的検査でも,上皮性成分を認めず仮性嚢胞と診断した.腹部の鈍的外傷以外明らかな異常なく,経過・術前検査・術中所見・病理所見から最終的に外傷後の後腹膜仮性嚢胞と診断した.外傷後と考えられる後腹膜仮性嚢胞の報告は少なく,まれな症例と考え,若干の文献的考察を加え報告する.