2016 年 77 巻 10 号 p. 2582-2586
患者は45歳の男性で,右下腹部痛を主訴に当院総合診療部を受診し,腸閉塞の診断となり緊急入院となった.既往歴として両側小児ヘルニアの手術歴があったが開腹歴はなく,身体所見で鼠径部に膨隆は認めなかった.イレウス管挿入により腸閉塞は改善し退院となるも,退院8日後に腸閉塞再発の診断にて緊急入院,精査加療目的に外科へ紹介となった.CT上,回腸末端部に絞扼を疑わせる所見を認めたが,全身状態良好のためイレウス管にて小腸減圧および腸閉塞改善させた後に,診断加療目的の腹腔鏡手術を施行した.腹腔鏡所見では全小腸に閉塞起点は認めず,右鼠径部に内膀胱上窩ヘルニアを認めたためにメッシュ補強による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.術前内膀胱上ヘルニアは念頭になく,内ヘルニアの原因精査として腹腔鏡にて観察することが確実な診断および治療に結びついたと考えられた.