日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸閉塞を呈した尿管癌下行結腸転移の1例
鳩山 恵一朗阿部 隆之三浦 佑一上村 卓嗣佐藤 耕一郎加藤 博孝
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2016 年 77 巻 12 号 p. 2979-2983

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抄録

症例は83歳,女性.便秘,腹痛を主訴に近医を受診し閉塞性イレウスの疑いで紹介搬送された.CT上,下行結腸の全周性壁肥厚と口側結腸の著明な拡張,左水腎症と左上部尿管腫瘤を認めた.画像上この2腫瘍は離れた位置にあった.大腸穿孔の危険性が高いと判断し,紹介同日緊急に横行結腸双孔式人工肛門を造設し,後日,下部消化管内視鏡を施行した.下行結腸に狭窄があるも生検で悪性所見なし.尿細胞診も悪性所見は出なかったが,臨床的に下行結腸癌,左尿管癌の重複癌と診断し,左半結腸切除術,左腎摘,左尿管全摘術を施行した.切除標本の肉眼的所見で狭窄のある下行結腸壁は硬い線維性肥厚を認めるも粘膜面は保たれており,大腸癌といえる所見ではなかった.病理組織的診断では尿管癌と酷似する組織像を下行結腸壁に認め,両腫瘍に連続性を認めず,尿管癌下行結腸転移の報告であった.尿管癌が結腸転移をきたした極めて稀な症例を経験したので報告する.

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