2016 年 77 巻 2 号 p. 317-321
症例は82歳,男性.胸背部痛を主訴に近医を受診し,精査にて食道裂孔ヘルニアおよび心嚢内のfree airとniveauを認め,胃潰瘍穿孔・心タンポナーデ疑いとして当院搬送となった.CTで胃壁から心嚢への瘻孔を認め,上部消化管内視鏡検査でも縦隔内へ脱出した胃の前壁に潰瘍性病変を認めた.食道裂孔ヘルニアおよび穿孔性胃潰瘍による心膜膿気腫の診断にて,緊急手術を施行した.胃壁とヘルニア嚢が一部強固に癒着しており,切離すると穿孔部位が露出された.食道裂孔ヘルニアを修復し,穿孔部に大網充填術を施行.心嚢内からは混濁した排液を認めたため,食道裂孔経由と剣状突起背側から心嚢内へドレーンを留置し手術終了した.術後経過良好であり,リハビリを経て術後42日目に退院となった.