日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
胃癌局所切除後に発生した癌肉腫の1例
森本 悠太角田 和彦佐藤 攻根本 啓一
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 77 巻 2 号 p. 340-345

詳細
抄録

胃癌肉腫は,1950年以降61例の報告しかないまれな疾患である.今回われわれは,胃粘膜内癌局所切除後に発生した胃癌肉腫の1例を経験した.症例は78歳の男性で,74歳時に3箇所の早期胃癌に対し局所切除術(2箇所は粘膜下層,1箇所は筋層までの切除)を施行した.組織学的には全て粘膜内腺癌で断端陰性であったが,筋層まで切除した病変にリンパ管侵襲を認めた.術後通院を自己判断で中断していたが,他院で施行されたCTで再発が疑われ当科紹介となった.胃体上部後壁の前回筋層まで切除した部位に一致して腫瘤を認めた.生検で非上皮性悪性腫瘍と診断され,胃全摘術を施行した.病理検査では,中心部が肉腫,辺縁部が腺癌からなる癌肉腫と診断された.胃切除後に発生した胃癌肉腫は6例報告されているが,局所切除部に一致して発生した胃癌肉腫は本例が初めての報告である.経過より本症例における癌肉腫の発生機序は腺癌の脱分化が原因と推測された.

著者関連情報
© 2016 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top