2016 年 77 巻 2 号 p. 388-392
成人腸重積症の中でも大腸における逆行性の腸重積は非常に稀な疾患である.今回,われわれはS状結腸腺腫内癌による逆行性腸重積を生じた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は54歳の男性.左側腹部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.腹部CT検査でS状結腸逆行性腸重積症と診断され,緊急手術を施行した.開腹所見にて,逆行性に陥入したS状結腸を認め,徒手整復の後,リンパ節郭清を伴うS状結腸部分切除を施行した.切除標本ではS状結腸に二つのpolypを認め,うち一つのpolypの先端に悪性腫瘍を認めた.組織学的にはpapillary adenocarcinoma in adenomaであった.過去の報告においても成人逆行性腸重積症の原因病変が有茎性悪性腫瘍であることが多いことから,手術ではリンパ節郭清を含めた腸管切除を考慮すべきであると思われた.