2016 年 77 巻 4 号 p. 868-872
人工肛門脚での穿孔は,過去に数例の報告しか見られない極めてまれな合併症である.原因としては自己管理操作に伴うものや宿便,癌の穿通の報告がある.われわれは,S状結腸人工肛門脚部で宿便による穿孔をきたした症例を経験した.症例は61歳の男性.腹会陰式直腸切断術の1年後に,突然の腹痛で受診した.ストマ周囲に強い圧痛があり,腹部CTでストマ周囲の腹壁内に便塊と思われる像を認めた.緊急手術を行うと,腹壁内に硬い便塊を含む嚢腫が存在し,隣接する人工肛門脚のS状結腸に穿孔を認めた.人工肛門を挙上していた創からのみの操作で,病変部の結腸切除術,および別の創を作成して人工肛門再造設術を行った.創感染を生じたものの他は順調な経過で,14病日に退院となった.病理組織学的検査では,憩室や腫瘍はなく宿便性大腸穿孔と診断した.