日本臨床外科学会雑誌
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症例
敗血症性ショックを呈した術後急性結腸偽性閉塞症の1例
松本 朝子吉川 勝広小林 壽範稲田 涼大石 賢玄濱田 円
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2016 年 77 巻 5 号 p. 1138-1144

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抄録

患者は63歳,男性.直腸癌Ra,cT3,N1,M0,cStage IIIaの診断で腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.術中から胃,小腸,結腸の拡張を認めた.術後は排便・排ガスを認めるが,下行結腸~上行結腸に著明な大腸拡張と小腸ガス像を認めた.術後腸管麻痺と判断し経鼻イレウス管で腸管減圧するも,術後20日目に拡張腸管から緑膿菌のbacterial translocationを併発し,敗血症性ショック,DICに陥った.経肛門的イレウス管挿入を追加し,拡張腸管の減圧を行い全身管理を行うことでDICを脱却できた.内視鏡検査・CT検査で縫合不全や閉塞起点はなく,また残存腸管にも血流障害や腸炎などの感染も認められなかったことから,腹部手術後の急性結腸偽性閉塞症と考えられた.
術後急性結腸偽性閉塞症の報告は散見されるが,本症例のように腹腔鏡術後に発症し,敗血症性ショックを合併する症例は極めて珍しい.

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