2016 年 77 巻 5 号 p. 1187-1191
症例1は67歳,男性.排便障害のため施行した下部消化管内視鏡検査にて,下部直腸に多発する粘膜下腫瘍を認めた.生検にて直腸カルチノイド(神経内分泌腫瘍,以下直腸カルチノイド)と診断され,腹腔鏡下ISR(括約筋間直腸切除術)を施行した.症例2は62歳,男性.便潜血陽性のため施行した下部消化管内視鏡検査にて,症例1と同様の多発性直腸カルチノイドを認めたため,腹腔鏡下超低位前方切除術を施行した.病理組織診断にて,症例1は最大腫瘍径10mm,深達度SM(1,400μm),ly1であり,症例2は最大腫瘍径10mm,深達度SM(2,500μm),ly1,pN2であった.症例1は術後3年,症例2は術後2年無再発で経過観察中である.現在,多発性直腸カルチノイドの治療方針は明確ではないため,自験例2例を含め文献的考察を加え報告する.