2016 年 77 巻 5 号 p. 1261-1264
症例は79歳,女性.慢性骨髄増殖症候群のため抗血小板剤を内服中であった.前日より腹痛と嘔気があり,当院を受診し入院となった.CTにて骨盤腔を占め腹直筋に及ぶ巨大血腫を認め,貧血と血圧低下のため腹腔内出血の診断で緊急手術を施行した.左下腹壁動脈の断裂による出血を認めたことから,骨盤内にまで波及した腹直筋血腫と診断,結紮止血と血腫除去を施行した.術後出血性胃潰瘍を併発したものの保存的治療にて改善し退院となった.今後,社会の高齢化と抗血栓療法患者の増加により,腹直筋血腫の患者の増加が予測され,十分考慮に入れるべき疾患だと思われる.