日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳癌術後の上肢に発生したStewart-Treves症候群の1例
水田 誠福井 由紀子遠藤 真一郎内田 茂樹坪野 充彦足立 靖
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2016 年 77 巻 6 号 p. 1324-1328

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抄録

Stewart-Treves症候群(以下STSと略す)は,乳房切除後の上肢のリンパ浮腫に続発した脈管肉腫として報告された比較的稀な疾患である.今回,乳房切除術後24年で発症したSTSの1例を経験した.患者は80歳の女性.56歳時に左乳房切除術を受け,19年後に左上肢のリンパ浮腫が出現し,さらに,その5年後に左胸部から左上肢の皮膚の異常が出現した.左上肢の浮腫が著明で,左前胸部から左上肢に非連続的で境界明瞭な地図状の暗赤紫色の皮膚腫瘍を認めた.生検の病理所見は血管肉腫で,臨床経過からSTSと診断された.明らかな遠隔転移は認められなかったが,有効な治療法は確立されていないため,左上肢痛に対するモルヒネの使用等,緩和ケアのみを行った.その後,肉腫は急速に増大し多量の侵出液と悪臭を伴うようになった.低栄養が進行し,左胸水の増量から最終的には呼吸不全をきたし,初診から4カ月で死亡した.

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© 2016 日本臨床外科学会
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