日本臨床外科学会雑誌
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症例
プロテインC欠乏に伴う大動脈壁在血栓に起因した上腸間膜動脈塞栓症の1例
和田 幸也平松 和洋加藤 岳人柴田 佳久吉原 基青葉 太郎
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2016 年 77 巻 6 号 p. 1363-1368

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抄録

症例は55歳,男性.突然の心窩部痛を主訴に当院を受診した.胸腹部造影CTで上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:以下SMA)の造影が途絶し,上行大動脈に壁在血栓を認めたことから,上行大動脈壁在血栓に起因したSMA塞栓症と診断した.腹部血管造影検査で血栓の吸引・溶解を行い主要血管の血流の改善を認めたため,ヘパリンの持続投与を行いながら経過観察を行った.血栓性素因が疑われ精査したところ,プロテインC欠乏症による易血栓傾向であることが判明した.発症6日目に,上行大動脈壁在血栓が総腸骨動脈分岐部を塞栓し,腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行した.その後,なかなか経口摂取が進まず,小腸造影にて狭窄所見を認めたため,発症35日目に小腸切除術を施行した.SMA塞栓症の原因が,プロテインC欠乏症に伴う上行大動脈壁在血栓であることは稀であり,文献的考察を加え報告する.

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© 2016 日本臨床外科学会
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