2016 年 77 巻 6 号 p. 1417-1421
症例は65歳の女性.急性胃軸捻転で近医へ入院し上部消化管内視鏡を施行したが,残渣が多く観察困難であり中止し,減圧加療を継続していた.2日後に下腹部痛が出現して再度腹部CTを施行され,胃穿孔の診断で,当院に救急搬送され,緊急手術となった.完全内臓逆位の胃軸捻転(短軸性,前方型)であり,胃体上部後壁に約3.5cmの穿孔部位を認めた.捻転を解除して,壊死穿孔部位を含む形で部分切除をした.再発予防目的で大網を前腹壁に3点固定した.術後,経過良好であり,第23病日に退院し,再発はみられなかった.内臓逆位に伴う消化器合併奇形では,腸回転異常・先天性胆道閉鎖・前十二指腸門脈・多脾症・輪状膵などが報告されている.内臓逆位に伴う胃軸捻転は,本邦では小児で1例報告されているのみであり,成人では報告例はない.本疾患について若干の文献的考察を加えて報告する.