日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝外門脈閉塞症を合併した胆嚢皮膚瘻の1例
澤木 康一友杉 俊英日比野 壮貴松下 英信大河内 治川瀬 義久
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2016 年 77 巻 7 号 p. 1772-1776

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抄録

急性胆嚢炎は周囲臓器に炎症が波及し,胆嚢周囲膿瘍,肝,横隔膜下膿瘍を形成するが,腹壁に穿通し腹壁膿瘍を形成し胆嚢皮膚瘻となることは比較的まれである.肝外門脈閉塞症を合併した胆嚢皮膚瘻の1例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.一週間前からの右季肋部の有痛性腫瘤を主訴に受診,CTにて右側腹壁に軟部腫瘤を認めた.胆嚢は萎縮していたが腫瘤と近接していた.その際に,肝外門脈閉塞症を認めた.入院精査となり,その翌日に自壊し暗赤色の排膿を認めた.瘻孔造影を行うと胆嚢との交通を認め,胆嚢皮膚瘻と診断した.開腹にて胆嚢摘出術,瘻孔切除術,結腸部分切除術を施行した.病理検査では悪性所見は認めず,胆石性胆嚢炎に伴う胆嚢皮膚瘻,肝外門脈閉塞症と診断した.胆嚢皮膚瘻は治療の進歩により,現在ではまれな病態となった.検索しえた範囲では肝外門脈閉塞症を合併した胆嚢皮膚瘻の報告例はなく,極めてまれな病態と考えられた.

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