2016 年 77 巻 8 号 p. 2011-2015
症例は52歳の女性.進行直腸癌に対して,腹腔鏡補助下低位前方切除術(D3郭清)を施行し,最終診断は,直腸癌Rb,pT4a N0 M0,pStage IIであった.術後10カ月の腹部超音波検査で,左総腸骨動脈前面に33mm大の腫瘤を指摘された.精査のPET/CTでは同部に異常集積を認め,リンパ節再発が疑われた.他に転移再発を疑う所見は認めなかったため,開腹腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は,前回手術で処理した上直腸動脈根部に位置しており,#252リンパ節再発と考えた.病理組織所見では,リンパ節構造は認めず,筋線維芽細胞系の紡錘形細胞が主体であった.悪性所見は認めなかった.腫瘤内に前回手術で血管処理に使用した非吸収性クリップを2つ認めた.以上から炎症性偽腫瘍と診断した.術後1年半経過し,再発徴候は認めていない.