日本臨床外科学会雑誌
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症例
経皮的心肺補助法で救命した緊急手術時たこつぼ心筋症による心停止の1例
佐藤 英昭森川 孝則林 洋毅元井 冬彦内藤 剛海野 倫明
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2016 年 77 巻 9 号 p. 2175-2179

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抄録

巨大肝細胞癌の70代の男性に対し肝右葉切除術を施行したが,術翌日に腹腔内出血を認めたため,緊急開腹止血術の方針となった.全身麻酔導入時に,たこつぼ型心筋症に由来する心停止をきたしたが,即座にpercutaneous cardiopulmonary support (PCPS)を導入することで蘇生し,血管造影下での塞栓術で止血が得られた.その後,後遺症はなく第36病日に転院となった.たこつぼ型心筋症は,左室心尖部を中心とした広範囲の壁運動異常を呈する疾患であり,多くは1カ月以内に左室壁運動がほぼ正常化する,予後良好な疾患とされている.しかし,近年,たこつぼ型心筋症による心停止から不幸な転帰を辿った報告も見受けられ,今後の高齢者手術の増加に伴い,類似症例の増加が懸念される.本症例は,たこつぼ型心筋症による心停止に対しPCPSを導入することで救命できた本邦初の貴重な症例である.

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© 2016 日本臨床外科学会
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