2016 年 77 巻 9 号 p. 2229-2234
症例は38歳,男性.1週間前からの発熱・腹痛・下痢を主訴に近医を受診し,急性虫垂炎を疑われ当院救急外来へ紹介となった.来院時の体温は39.0℃,腹部は平坦・軟で右下腹部に圧痛のある鶏卵大の腫瘤を触知した.血液検査では白血球とCRPの上昇を認め,腹部CTでは腫大した虫垂に接して後腹膜膿瘍を認めた.穿孔性虫垂炎を疑い虫垂切除術を施行した.切除した虫垂の炎症所見は軽度で,中央部に壁肥厚を認めた.病理診断は虫垂印環細胞癌だった.術後の下部消化管検査では大腸に腫瘍性病変は認めず,上行結腸に多発性に憩室を認めた.上行結腸憩室の1箇所に浮腫状の発赤を認め憩室穿孔による後腹膜膿瘍を疑った.術後19日目に再入院し,21日目に腹腔鏡補助下にD3郭清を伴う右半結腸切除術を行った.リンパ節転移はなく,最終の病理組織学的診断はpSS,pN0でfStage IIの虫垂印環細胞癌であった.術後4年経った現在,無再発生存中である.